花神の庭~薹の童(とうのわらべ)
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やられた……。僕は苦虫を噛みながら着物を翻す。
「かって嬉しい、花いちもんめ」
「まけて悔しい、花いちもんめ」
両手は小さな手が握っている。白黄の花笠に、揃いの晴れ着の稚児が、二手に分かれて『花いちもんめ』を遊ぶ。
「花守りが欲しい」
「花守りが欲しい」
睨んでもはしゃぐだけ。口を開けば歌い、体も勝手に動く。下手すれば延々交換され続ける。
「ねこ根子ねずみ獲り、花守り薹の中」
迂闊だった。蹲って泣くのに声を掛けてこの様。こいつらは年々増え続け、根っこは案外毒がある。
やれやれ仕方ない。
「あ~まつすがそを、もとかりた~ち」
「あ~ま?」
「すえかりきりて、やはりにとりさきて」
「……?」
「あまつのりとの、ふとのりとごとを」
「とを~」
「の~れ」
「の~れ♪」
――パン、パン!
大人を甘く見るなよ、ちびども。
縁側で猪口を傾け、蕗の薹(ふきのとう)の天麩羅を口に放る。
あー、苦い!
「かって嬉しい、花いちもんめ」
「まけて悔しい、花いちもんめ」
両手は小さな手が握っている。白黄の花笠に、揃いの晴れ着の稚児が、二手に分かれて『花いちもんめ』を遊ぶ。
「花守りが欲しい」
「花守りが欲しい」
睨んでもはしゃぐだけ。口を開けば歌い、体も勝手に動く。下手すれば延々交換され続ける。
「ねこ根子ねずみ獲り、花守り薹の中」
迂闊だった。蹲って泣くのに声を掛けてこの様。こいつらは年々増え続け、根っこは案外毒がある。
やれやれ仕方ない。
「あ~まつすがそを、もとかりた~ち」
「あ~ま?」
「すえかりきりて、やはりにとりさきて」
「……?」
「あまつのりとの、ふとのりとごとを」
「とを~」
「の~れ」
「の~れ♪」
――パン、パン!
大人を甘く見るなよ、ちびども。
縁側で猪口を傾け、蕗の薹(ふきのとう)の天麩羅を口に放る。
あー、苦い!
ファンタジー
公開:19/03/04 14:00
更新:20/03/05 01:01
更新:20/03/05 01:01
蕗の薹(ふきのとう):
待望・仲間・愛嬌
ねこねこねずみとり~は、富山版
順番決めをアレンジしたものです
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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