花神の庭~六花仙と雪の花
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水際に佇む高髻(こうけい)の女。
のっけから大物だ。今年の花神(はなかみ)送りが早かったのも原因だが、僕の力も年々弱っている。姿は時を禁じても、魂は老いる。人は永遠を渡れる様に出来ていない。
「たかあまはらに、ちぎたかしりて」
緑の領巾(ひれ)が踊り、髪に水仙が香る。六つに切れた裾が水を滑り、釣られて追った雪駄が、氷を割って沈む。
ころころ弾む様に嗤う。嫋やかに見えて仙だ。人ごときを介すのは矜持に悖るか。
割れ目が凍って足が抜けない。膝が震え、歯が鳴る。
「すめみまのみことの、みづの、みあらかつかへまつりて」
ぽっと、足元に灯りが点る。温もりが膝裏に伝わる。
「あまのみかげ、ひのみかげとかくりまして、やすくにとたいらけくしろしめさむ」
天へ昇る領巾を見届け、水から出て膝を屈める。
「ありがとう。大丈夫だから、お前も行きな」
灯りの消えた跡に、ランプの形をした、雪の花が一輪咲いた。
のっけから大物だ。今年の花神(はなかみ)送りが早かったのも原因だが、僕の力も年々弱っている。姿は時を禁じても、魂は老いる。人は永遠を渡れる様に出来ていない。
「たかあまはらに、ちぎたかしりて」
緑の領巾(ひれ)が踊り、髪に水仙が香る。六つに切れた裾が水を滑り、釣られて追った雪駄が、氷を割って沈む。
ころころ弾む様に嗤う。嫋やかに見えて仙だ。人ごときを介すのは矜持に悖るか。
割れ目が凍って足が抜けない。膝が震え、歯が鳴る。
「すめみまのみことの、みづの、みあらかつかへまつりて」
ぽっと、足元に灯りが点る。温もりが膝裏に伝わる。
「あまのみかげ、ひのみかげとかくりまして、やすくにとたいらけくしろしめさむ」
天へ昇る領巾を見届け、水から出て膝を屈める。
「ありがとう。大丈夫だから、お前も行きな」
灯りの消えた跡に、ランプの形をした、雪の花が一輪咲いた。
ファンタジー
公開:19/03/04 12:00
水仙:自尊心・気高さ
雪の花(スノードロップ):
希望・告知・慰め
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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