花神の庭~蠢動(しゅんどう)

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冬の檻が風に綻ぶと、庭は浮き足立つ。
今年は早いな。耳を掠め飛ぶさんざめきに、僕は渋々腰を上げた。
雨戸を開くと、陽光が羽織りを射る。鳥か虫の聲(こえ)に似て、どこか異質な響きがふつりと止む。

「たかあまはらにかむづまります。すめらがむつかむろぎ、かむろみのみこともちて、やおよろづのかみたちを。かむつどへにつどへたまひ……」

――パシン!
目前一度。
――パシン!
胸前一度。

迎え手を打つなり、我が物顔に鼻先を横切り、溢れる。大きいモノ。小さいモノ。丸いモノ。尖ったモノ。光るモノ。暗いモノ。形有るモノ。無いモノ。雪降り月に眠った花神(はなかみ)達が、起き直り、蠢く。

――パン!パン!

送り手を聞くが早いか、花神は無数の矢と化し天へ昇った。
これで春が来る。天地の節目を結ぶ花守り(はなもり)。その為に庭に繋がれている。

さあ忙しくなる。帰りそびれた花神を見付け、送り届けなければ。
ファンタジー
公開:19/03/04 00:35
花神(植物の精・魂)の守り人 「」の平仮名は祝詞(のりと) 大祓詞(おおはらえことば)より

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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