炬燵の月

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妻の四十九日を無事に終え、私は堀り炬燵で一人、テレビを見ていた。
「寒いな」
炬燵をめくる。
中は夜が降りて月が淡く輝いていた。
「暗いな。どうりで」
吸い込まれるように堀り炬燵に潜ると、私は壁に背を預けて座り込み、静かに佇む満月を見つめた。
ふと右手の闇が揺らいだ。飼い猫のマルだ。マルは暗幕から顔を出すと、月に顔を近づけた。クンクンと匂いを嗅ぐと刹那、月を引っ掻き床に落とした。
突如眼前に現れた濃く重い闇に、私は目を伏せ、傍らで月とじゃれるマルのほのかな体温に触れながら静かに目を閉じた。



「じいちゃーん!遊びにきたよ!」
突然、裂くように響くカン高い声に目を覚ます。振り向くと炬燵の空は白み始めた。

バタバタ…

足音を響かせる孫を迎えるために炬燵から外に出る。まったく…簡単には穏やかな新生活を迎えることはできないようだ。

炬燵をめくると陽だまりの中、マルは月を抱えて眠っていた。
ファンタジー
公開:19/03/05 18:24
更新:19/03/18 23:08
新生活

イチフジ( 地球 )

マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。

100 サクラ

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