花神の庭~棘姫の腕(いばらひめのかいな)

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雨上がり、掃除中に箒を掴まれた。蕾の堅い野薔薇が、若い蔓を伸べている。
「水なら降ったろう。虫が付くには早いし」
花神(はなかみ)の本体の世話も花守り(はなもり)の役目。どれどれと腰を落とせば、次は草履に絡む。
「遊びたいなら他を当たれ」
足を引くと腕が付いて来た。花と同じ乳白色の片腕。折らない様に草履を脱いだら、盛大に爪を立てやがった!
「くぬちに。かむはらへにはらひたまひて……」
奏上し掛け、腕が肘で捩れているのに気付く。
薬箱、どこへ仕舞ったか。僕はすぐ治るし、家には最低限以下の生活用品しかない。
「待ってろ。今何とか……痛っ!」
さわさわ葉が揺れる。

少し考え、羽織の裾を裂いて帯を作る。折った箒の柄を腕に当て、即席添え木の完成。
「Es tut mir leid.(悪かった)」
細い指が、僕の足を撫でて旅立った。
どうにか通じたらしい。僕が謝る義理もないが、ここは代弁という事で。
ファンタジー
公開:19/03/05 17:00
野薔薇:素朴な愛・才能・詩 シューベルト『野ばら』イメージ

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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