花神の庭~風信手毬(ふうしんてまり)

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庭のそこここで、色とりどりの手毬が跳ねて煩い。
これも季節の風物詩だが、ひたすら邪魔だ。なら雨戸を閉じろ?いや、その程度で片付かない。
『…がさぁ、……とかって、ぁの』
『今度・ちに・・・ぅで…ょ?・・を』
『毎度お騒がせしております!ご町内の皆様』
『キゃ~~ァはハハは!!』

――ぶんっ!
虫網で手近な毬から捕獲する。跳ねるだけならまだしも、風信子(ヒヤシンス)という花、やたら喋る。
「かくきこしめしては」『ヤダウケる~(笑)』「つみというつみはあらじと」『ほんとマジ最悪』「しなとのかぜのあま…っ」『え~ご町内のみな』「あまのやえぐもをふきはなつのごとく!」『うっせーてめ』
「あしたのみぎりゆうべのみぎりをあさかぜゆうかぜのふきはらふことのごとく!」


疲れる。去年の血塗れヒュアキントスの方がマシだった。
親切のつもりだろうが、今更外の声なんか要らない。
どうせ僕は、庭を出られない。
ファンタジー
公開:19/03/05 00:00
更新:19/03/05 22:02
風信子(ヒヤシンス) :遊技・嫉妬・悲哀 風信(ふうしん)は、季節風 あるいは風の便りを意味します

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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