祖父

祖母が亡くなって早５年。祖父はツギハギだらけの服を毎日着るようになった。
身の回りのことは全て自分でやるようになった。今までは「家事は女の仕事だ！」と言わんばかりだったのにとんだ変わり身だ。
たまに私が祖父の服を洗濯しようとすると「触るな！」と怒鳴ってくる。
毎日辛そうに手洗いしているから手伝ってやろうと思ったのになんだその言い草は！
食事だって自分で買ってきて調理したものしか食べなくなった。
まったく…何でこうなったのやら…
「爺ちゃんは婆ちゃんのことを忘れたくないんだ」
両親の言葉に私は首を傾げる。
「あの服は婆ちゃんが作ってくれたもの。だから痛まないように手洗いしているんだ。食事だって婆ちゃんのレシピ見てその味を再現している。爺ちゃん、言葉にしなかったけど婆ちゃんのこと愛してたから」
祖母が亡くなってからの祖父の新生活は、祖母を忘れないための戦いの日々でもあった。
頑張れ、爺ちゃん。