蛍雪

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大学に落ちた日、季節外れの雪が降った。満身創痍で家路につくと、家の前に蛍が死んでいた。こいつは僕が勉強する時に、灯となってくれた蛍だ。きっと僕が春を連れてこなかったから死んでしまったのだろう。
責任を感じた僕は、蛍をそっと紙で包み、弔う場所をさがした。

暖かいところが良いだろうと、電車を乗り継ぎ、海辺まで来た。
春の海は暖かく、さざ波がぶくぶくと泡を立てている。
紙を開けると不思議なことに蛍は生き返り、ぼんやりとした光を放ちながら空高く飛び立った。

砂浜に寝転んで飛び立つ蛍を見て思った。僕の心は冬のままなのに、もう辺りはすっかり春だ。

「合格。」どこからともなく声がすると思ったら、さっきの蛍だ。蛍はみるみるうちに女の人に姿を変え、僕に言った。
「合格よ、あなた優しいし、よく頑張ったから私の夫にしてあげる。」
優しく微笑む彼女を見て、僕の中の雪が溶け、涙となって溢れた。
その他
公開:19/03/02 11:46
更新:19/03/02 13:45

吉田吉( 千葉 )

田丸先生の講座を受講したことをきっかけに、ショートショートを書き始めました。表現するのは楽しいですね。末永く、書き続けていくのが今の目標です。
 

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