8
8
「で、肝心の、柔和かつ大胆な芭蕉の襖絵を撮り忘れ、学芸員の岩田さんとも会えず仕舞い。全く…」
メモをもとに書き上げた記事に、編集長は不平タラタラだった。
「夢物語もいいが、基本的事実に誤謬があるようじゃ、使い物にならんよ」
「事実誤認? いったいどこに?」
編集長は、ヤレヤレという風に原稿と写真を示した。
「石の数だよ。全く情けない」
「いやいやいや。写真の石の数と原稿の石の数とが違うのは、庭の石は必ず一個隠れるように配置されているためで…」
編集長は「もう勘弁してくれ」という顔で私をみた。
「石はどのように見ても必ず一個は隠れる。ということは、目視でも、写真でも、図面でも、箱庭でも、ドローンでも、庭に降りても、それらを照合してみても必ず一個隠れるのだ。であるからして、君の為すべきは―」
「16個目の石を見てくること」
私と編集長とは、そう同時に言うと顔を見合わせて、呵々と笑った。
メモをもとに書き上げた記事に、編集長は不平タラタラだった。
「夢物語もいいが、基本的事実に誤謬があるようじゃ、使い物にならんよ」
「事実誤認? いったいどこに?」
編集長は、ヤレヤレという風に原稿と写真を示した。
「石の数だよ。全く情けない」
「いやいやいや。写真の石の数と原稿の石の数とが違うのは、庭の石は必ず一個隠れるように配置されているためで…」
編集長は「もう勘弁してくれ」という顔で私をみた。
「石はどのように見ても必ず一個は隠れる。ということは、目視でも、写真でも、図面でも、箱庭でも、ドローンでも、庭に降りても、それらを照合してみても必ず一個隠れるのだ。であるからして、君の為すべきは―」
「16個目の石を見てくること」
私と編集長とは、そう同時に言うと顔を見合わせて、呵々と笑った。
ファンタジー
公開:19/03/02 10:35
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
ログインするとコメントを投稿できます