濃紺

2
6

ねえ家きて。発表会しよう。

どうやら新しい曲が弾けるようになったらしい。

美しい彼女。
顔の造形だけではなく彼女から溢れ出る全てのもの。美しいという言葉がぴたりと嵌る。彼女のためにその言葉が作られたのかと錯覚させられる程。
鍵盤を弾くその指は繊細そのもので。
そして指先から流れる音は私の頭の中を支配し、あっという間に消えていった。

あぁ難しい。間違えた。

彼女は悔しそうな顔をすると私の方を見た。

とてもいいね。

あなたもピアノを好きになって。
教えてあげる。座って。
ラはどこかわかる?そう。ここはね、ファ♯にもなるしソ♭にもなるの。
彼女は話し出した。
幼い頃の発表会での出来事、
ピアノをやめた友達の話、弾く人によって曲の色が変わるということ。
ピアノを好きになってよ。
そしたらもっともっと仲良くなれるよ。

私は胸がいっぱいになって泣きそうになる。ああこの子にはかなわない。
青春
公開:19/03/03 09:07
更新:19/03/03 09:27

そら豆( 港区 )

間違えてアカウント2つになってしまい、
もう1つの方は消しました。こっちのアカウントがメインです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容