聖徳太子とお茶

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「救世観音菩薩立像って秘仏だったんだぁ!また行けば逢えると思ったのに…」
夢殿の前で肩を落とす。
ーー私が下調べしないで旅行計画しちゃったから。失敗したな。
後悔の念に駆られる。

一昨年
『柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺』
この俳句さながらの景色は、いつも意識しない風情に酔う。酔い越しで辿り着いた夢殿は御開帳だったのだ。
聖徳太子の等身であると伝えられた救世観音菩薩立像。
優しく私に微笑み、その前に居るだけで癒された。
仏像が好きで神社仏閣は色々周ったが、こんな経験は初めてだった。
一人旅の私。客は何故か私だけ。
ただ見つめて、時が過ぎた。

また逢いたいと思ったのが、この3月だった。
そして、扉の閉まった夢殿の前にいる。
側にいるのに逢えないなんて。

「君が急に来るからだよ」
振り向くと聖徳太子が赤いニット帽を被ってまたアルカイックスマイルで微笑んだ。
「ようこそ!一緒にお茶をしよう」
ファンタジー
公開:19/03/03 09:00
更新:19/03/03 04:03
バーテンダーと時間旅行 おおえさき×田丸雅智 にがおえ屋

さささ ゆゆ( 神奈川 )

最近生業が忙しく、庭の手入れが疎かな庭師の庭でございます。

「これはいかんっ!!」と突然来ては草刈りをガツガツとし、バンバン種を撒きます。

なので庭は、愉快も怖いも不思議もごちゃごちゃ。

でもね、よく読むと同じ花だってわかりますよ。


Twitter:さささ ゆゆ@sa3_yu2





 

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