朝霧

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まだ夜明け前の午前5時過ぎ、彼女は突然現れた。

どこから手に入れたのか、合鍵を使って勝手に家へ上がり込み、物が散乱した部屋の中を次から次へと掃除する姿に驚きを隠せない。
すっかり綺麗になった部屋を見回して頷いた彼女は、そのままキッチンへと向かった。そして包丁を取り出したものだから全身から血の気が引く。


(この人は何が目的なんだ?
強盗の割には落ち着きすぎているし、訳が分からない)


そんな思いを裏切るように、彼女はバナナやリンゴなどの果物を慣れた手つきで剥いていく。
呆然とその様子を眺める事しかできなかったが、彼女はそんな私の事など眼中に無いらしく、黙々と食事を作っている。

塵一つ無いテーブルの上にマットを敷き、綺麗に盛られた朝食を置いた彼女は満足気な笑みを浮かべた後、薄暗い朝の霧に包まれた街の中へと消えていった。
その他
公開:19/03/01 14:17
更新:19/03/01 20:20

べね( 千葉 )

私の作品を読んで頂きありがとうございます。

趣味でショートショートを書いています。
だいたい即席で書いているので、手直しする事が多々あります。
多忙のため更新頻度はとても低いです、ごめんなさい。
星新一さんや田丸雅智さん、堀真潮さんの作品に影響を受け、現実感のある非現実的な作品を書くのが好きです。
最後の1文字までお楽しみください。

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