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禅師を突き抜けた私は、刃を振り捨てて禅師の前にひれ伏しました。
「お赦しを。お赦しを」
疑天竜安禅師は、乱れた半着もそのままに「面を上げなさい」と、私の肩に触れました。顔を上げた私の目の前には、禅師の臍がありました。臍には無数の襞が蠢いていて、その無数の隙間には、無数の石庭が蠢いていました。そこでは、私が振り捨てた無数の白刃が朝日をギラギラと反射し、無数の白砂全体が波光のように煌いていました。それは禅師のただ一つの臍の内に、無数の広大な湖のように広がっていました。
「赦すものも赦さぬものもないのです」
無数の臍の中にいる、無数の禅師が言いました。無数の私は無数の禅師に縋りつきました。ですが、私が縋ったのは深い湖で、溺れる私の口から呵々と吐き出された無数の泡の全ては、禅師の臍だったのでした。
窒息しかけた私が顔をあげると、テーブルは涎で溢れおり、それは窓外の琵琶湖に繋がっていました。
「お赦しを。お赦しを」
疑天竜安禅師は、乱れた半着もそのままに「面を上げなさい」と、私の肩に触れました。顔を上げた私の目の前には、禅師の臍がありました。臍には無数の襞が蠢いていて、その無数の隙間には、無数の石庭が蠢いていました。そこでは、私が振り捨てた無数の白刃が朝日をギラギラと反射し、無数の白砂全体が波光のように煌いていました。それは禅師のただ一つの臍の内に、無数の広大な湖のように広がっていました。
「赦すものも赦さぬものもないのです」
無数の臍の中にいる、無数の禅師が言いました。無数の私は無数の禅師に縋りつきました。ですが、私が縋ったのは深い湖で、溺れる私の口から呵々と吐き出された無数の泡の全ては、禅師の臍だったのでした。
窒息しかけた私が顔をあげると、テーブルは涎で溢れおり、それは窓外の琵琶湖に繋がっていました。
ファンタジー
公開:19/03/01 08:02
更新:19/03/01 09:44
更新:19/03/01 09:44
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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