何でもない絵本が

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読み終えた絵本を手に考える。
幼き日の僕は、どうして、この本をおもしろいと思っていたのだろう?主人公はパッとしないし、物語は単調だ。どうして、この本が大好きだったのだろうか?

それを考えるべく、絵本を再び開いたところで違和感を覚えた。先程読み終えたときよりも古くなっている気がしたのだ。
そして…作者の名前の下。そこには“S.I”と下手くそなサイン。この本は…“ぼく”の本?

すると、声が聞こえてきた。
「今日もこれ?本当にSはこの本が好きね…さぁ、読むわよ。はじまりはじまり…」
懐かしい母の声。

“ぼく”は、母の読み聞かせが好きだった。 そして、母の読み聞かせは、“ぼく”にとって大切だった。


読み終えた本を閉じる。
あぁ、そうか。
何でもない絵本が、あんなにも面白くて、キラキラと輝いていたのは…母が僕だけを想って読んでくれたものだったからだ。
その他
公開:19/02/27 21:37
更新:20/12/22 16:00
記念すべき40作目

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人1年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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