スイッチ一つで

保健所勤務の私の仕事は毎日スイッチを押すだけの簡単な仕事だ。
私はこのスイッチ一つで何憶何兆もの命を奪ってきた。命を奪うことに対する罪悪感など当に麻痺している。
周りの者は私を死神と忌み嫌うがクビにしようとしない。この仕事をやりたくないからだ。
私はその日も送られてきた処分リストを確認する。
本部から送られてきた処分対象惑星に『地球』という惑星が書かれている。自ら母なる星を傷つける野蛮な生き物が頂点に立つ惑星のようだ。
見れば確かに嘆かわしい行為を続ける個体が多い。
だがその一方で無垢なる生命体も多く確認できた。
私はこの惑星に対し『１ヶ月光年の猶予を求める』と本部に送った。地球という惑星の時間にして約３１００年分の猶予だ。
その間に地球に住む生命体が処分を免れる行為を続けることを私は願っている。
知性ある生命体諸君。私にこの惑星処分スイッチを押させることがないよう、これから頑張ってくれ。