カフェ俺

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『味がないのう』
オーナーはカフェオレを一口飲み、そう言った
「味はあるでしょう」
『いや、お前に。華はあるけど味がない。どんなに美味しいものを作っても本人がダメだとダメじゃ』
「……華と味?」
『華はいつか枯れるがの、客は一度思えた味は忘れはせん、商売とはそういうもんじゃ』

俺に味がない?
人間的につまらないと言うことだろうか
確かに華はあると思う
俺に会いに来るマダムもいるし、連絡先も幾つも渡された

『これじゃ』
渡されたカフェオレを飲んでみると、店の味だった
自分のと比べるとどこか違う
これを再現できないと店で出してもらえない

「どうすれば自分の味が?」
『ほほほ』
オーナーは珈琲に牛乳を注ぎ、指でかき混ぜた
『これがカフェ・オレじゃ、指にはその人の人生が詰まっとる、ワシもカフェを初めて40年、やっと自分の味が出てきたんじゃ』

俺は客にこれを出していたのかと思うと、ゾッとした
ミステリー・推理
公開:19/02/24 15:19

西木( Tokyo/Tokushima )

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