サトゥルヌスの鎌

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氷の鎌を携え、土星サトゥルヌスは、遠き星々の果て、小さき命の犇めく青海を、じっと睥睨しておりました。
大凶星(おおまがつぼし)と忌まれるサトゥルヌスは、時折古書を紐解く様に、黄道の十二宮を巡ります。

各々の概ね三十年に一度。選ばれた宮は、彼の鎌に撫でられると、暫く力を失って眠りに落ちる。この間、加護を受ける人の子に、険しい苦難が降り掛かります。
予期せぬ転変に揉まれ、人生の狂う者がどれ程生じようと、非情なまでに厳粛に、星宮を眠らせては去って行く。後を顧みもせず、重く暗い眼差しは、既に次を狙い定めているのです。

ただサトゥルヌスは、決して無体を好む星ではありません。
己を見つめ直し、逆境を乗り越えてこそ、真の成長を遂げるもの。ともすれば、享楽と放埓に魂を染める人の子に、試練という禊(みそぎ)は必要なのです。
あまりに皮肉で悲しい愛を抱き、今宵もサトゥルヌスは、何れかの宮を夢に鎖すのです。
ファンタジー
公開:19/02/25 00:10
土星回帰(サターン・リターン) サトゥルヌスは、ローマ神話の 土星(農耕の神)に当たります。

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

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