てんぷら

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主人は弟子の出来の悪さに悩んでいた
1年も修行しているのに、何一つ上手く揚げられない
暖簾分けなど夢のまた夢
人件費のみが嵩んでゆく

「銀座に店出すのが夢なんすよ」
「お前は無理だよ、店出すのは俺俺」
不幸なことに弟子は2人いた
口だけは一丁前だった

「どっちが天ぷらを愛してるか勝負だ」
バカ弟子は対決を始めた
「愛してまーす」
「僕の方が愛してまーす」
彼らはフライヤーの中に向かって叫んだ
主人の鶏モモは、声を嫌がるように浮かび上がってこない
「あいらぶテンプ〜ラ」
「テンプラブ!」
弟子の争いは続く
見かねた店主は両手で2人の後頭部を叩いた
その瞬間、彼らはバランスを崩し、体を支えようと出した手がフライヤーに浸かった
「うぎゃあああああ」
「気持ちい〜い」

油から手を出すと、こんがりときつね色に揚がっていた
「んまいんまい」
馬鹿弟子2人はそう言いながら互いの手んぷらを貪り合った
ホラー
公開:19/02/22 23:52

西木( Tokyo/Tokushima )

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