壁猫。外伝⑩（終）～桜作隅田川（さくらさくすみだがわ）

『卒業式後、文具屋裏』
玄関に貼られた呼び出し。
今度こそ怒ったか。俺のせいで事故に遭った上、あんな暗い本送られて。あいつが気に入ったらしい歌も、意味が解ってじゃないだろう。俺がどうかしてた。
あえて痛い目見に行くのもきついけど、けじめだ。
留年生の加藤不在で式が終了し、意を決して指定場所へ。

壁の猫が２匹に増え、仲良く遊んでた。煤と灰で、賽の川原みたいだった壁は、全面花柄。煙草の吸殻やゴミが消え、コンクリも煉瓦に化けてる。
洗ったバケツに、花束が山盛り挿してあった。１クラス分消えたって、朝騒いでた。

『屋上』
また呼び出し。
校庭で大勢の声。爆竹にスプレー。下手すりゃ火事だと思いながら階段を上る。軋むドアの先、

ペンキで汚れた服。煙の間、派手なピンクの頭。
『ＳＩＮＧ　ＹＯＵＲＳＥＬＦ（お前の歌を歌え）』
人文字の並木――隅田川の桜だ。

俺はガキみたいに笑い、泣きながら歌ってた。