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席に戻ると、通路側のシートに半着と行灯袴といういでたちの男が、シートを直角にしたまま座っていた。私は世間話のつもりで安部川の瀬切れの話をした。男は柔和な顔でうなずき、窓の外を指した。
「富士が見えますね」
私は、この短い区間に限り、富士山が反対側の窓から見える理由を説明しようと、男の方へ向き直った。すると座席の反対側の通路の窓にも、巨大な富士山が見えており、景色が逆向きに流れていた。車両が呵々と軋み、私は眩暈がした。
気がつくと目の前に石庭がある。私は隣に座っている疑天竜安禅師に
「夢を見ていたようです」と詫びた。
禅師は凝然と庭を見たまま「それは夢ではありませんよ」といった。
「富士が見えますね」
私は、この短い区間に限り、富士山が反対側の窓から見える理由を説明しようと、男の方へ向き直った。すると座席の反対側の通路の窓にも、巨大な富士山が見えており、景色が逆向きに流れていた。車両が呵々と軋み、私は眩暈がした。
気がつくと目の前に石庭がある。私は隣に座っている疑天竜安禅師に
「夢を見ていたようです」と詫びた。
禅師は凝然と庭を見たまま「それは夢ではありませんよ」といった。
ファンタジー
公開:19/02/22 10:18
更新:19/02/22 10:19
更新:19/02/22 10:19
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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