甘い賄い

13
12

 私が働く喫茶店に悪魔が出る。地獄の炎みたいな赤い角を一本生やし、この世の甘味を狩り尽くしそうな三叉槍を操る。その悪魔は甘いものが好きで、お客さんが人気のショートケーキを食べながら、甘い恋愛話なんかをしていると、突然現れて「ベリショーズvol2絶賛発売中ベリ♪」みたいな呪文を唱えだす。
 あそこ、そろそろかな。近所の奥さんと、去年結婚した娘さんだ。ショートケーキを食べながら娘さんが愚痴っている。旦那さんと喧嘩中らしい。
「ママはまだパパのこと好き?」
「好きよ」
「どこが好きなの?」
「どこって言われても。そうねぇ。パパの布団干すときね、ちょっとにおうのよ。加齢臭が」
「臭そう」
「ふふ。でもそのにおいが嫌じゃないなって思うと、まだ好きなんだなって気がする」
「……ふぅん」
 ベリ!
 出た! 私はすかさず捕まえて角をもいだ。悪魔は顔が溶けて消えた。私は角を口に放る。美味いんだなぁコレが。
ファンタジー
公開:19/02/23 12:29
ベリショ祭 ベリちゃん

10101298

書き手さま読み手さま、私の名前が読めない皆さま。交流大歓迎です!
https://twitter.com/1o1o1298

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容