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昇る朝日に、石庭の白砂が輝きを増す。その照り返しは、疑天竜安禅師の顔の皺に豊かな陰影を与え、いっそう柔和に見せた。
「世界は無限の部分でしょうか、それとも有限内に現象する無限でしょうか?」と、私は問うた。禅師は無言で、直下の箒目の一つを指した。私はそれを見た。すると私の左右に天を衝く白砂の壁面が迷路のように連なっていた。私は、戻る道を求めて、白の迷宮を彷徨った。
扉を開けてトイレを出ると、新富士を通過するところだった。車両に戻ると、満員の乗客全員が物凄い勢いで、ボックスティッシュからティッシュを呵々と引き出し、撒き散らしていた。車両内は瞬く間にティッシュで一杯になった。私はそれを掻き分けようとした。だが掻き分けることができない。散々もがいた挙句、私は、自分が今いるのが撒き散らされた無数のティッシュの中なのではなく、ただ一枚の、くしゃくしゃになったティッシュの皺の中であることに気付いた。
「世界は無限の部分でしょうか、それとも有限内に現象する無限でしょうか?」と、私は問うた。禅師は無言で、直下の箒目の一つを指した。私はそれを見た。すると私の左右に天を衝く白砂の壁面が迷路のように連なっていた。私は、戻る道を求めて、白の迷宮を彷徨った。
扉を開けてトイレを出ると、新富士を通過するところだった。車両に戻ると、満員の乗客全員が物凄い勢いで、ボックスティッシュからティッシュを呵々と引き出し、撒き散らしていた。車両内は瞬く間にティッシュで一杯になった。私はそれを掻き分けようとした。だが掻き分けることができない。散々もがいた挙句、私は、自分が今いるのが撒き散らされた無数のティッシュの中なのではなく、ただ一枚の、くしゃくしゃになったティッシュの皺の中であることに気付いた。
ファンタジー
公開:19/02/21 14:45
更新:19/02/21 14:46
更新:19/02/21 14:46
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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