ココカラ・ココマデ

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 会社で、ふと足元を見ると、床にチョークのようなもので「ココカラ」と書いた線が引いてあった。その直後、僕は部長に呼び出され、プロジェクト主任に抜擢されたのだ。
 メンバーを選出し、一丸となって仕事に取り組んだ。特に新人のK美さんは、仕事だけでなく、僕の健康にまで気を配ってくれて、次第に、なくてはならない人となっていった。
 三年後、プロジェクト成功が確実となった夜、「主任を残して帰れませんよ」というK美に、僕は言った。
「K美君。僕をコレマデ支えてくれてありがとう。そしてコレカラも僕を支えてくれないだろうか…」
 僕はポケットから指輪を取り出し、彼女に近づいた。彼女は後ずさりして、僕の足元を指さした。床にチョークのようなもので「ココマデ」と書いた線が引いてあった。僕は線を踏み越えていた。
「主任がそんな人だったなんて! セクハラです。パワハラです。部長に訴えます」
 僕は、ココマデだった。
その他
公開:19/02/22 09:49

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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