星を見送る3

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ケンジが星になってから、何度も春が訪れた。僕らは学生服を卒業し、都会へ向かいそこで暮らした。幼なじみたちと時々飲み会を開く。
ケンジの話は、みんなは僕の前では気を遣ってしないけれど、僕が話し出すとそこに合わせるように言葉を重ねる。その度にケンジの記憶がみんなの中で曖昧になっていくのを感じていた。
早春の、青い春の記憶。
若くて、柔らかいのに硬くて、一途で、美しいことが正しかった頃。
僕は子どもを育てるようになり、日毎に息子は成長して、立ち上がり、歩き、ほかの子らと学ぶようになった。ケンジがいなくなった歳の半分の歳になった。
生きているって、こんなにも楽しくて面白くて、そしてはらはらしてわくわくするんだよと、時が戻せるならケンジに伝えたい。
あの夜時を止めた少年が傷を抱えている。
大人になって胴回りが緩くなっていく僕の中で、骨ばった少年の海を見つめる眼差しが叶わない願い訴える。
ファンタジー
公開:19/02/22 06:34
更新:19/02/22 10:19

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