豚の角煮

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「久しぶりやねぇ、遠いとこから疲れたやろう。」
十数年ぶりに会う姉は、昔とちっとも変っていない。
「そういえば今日はあんたの好きな豚の角煮を作ったんよ。」
「豚の角煮!最近まともに食事できんかったからなぁ」

部屋に入ると甘辛いかおりがいっぱいに広がっていた。

「うわぁおいしそう。早く食べよう。」

ついさっきまであちこちが痛かった体も、今はピンピンしている。

「あんたもむこうでがんばったね、よぉやりきったよ」
茶碗にほくほくのご飯をよそう姉の背中から声がする。
「まぁね、褒められたもんでもなかったけど挫けずよぉやったわ」

見慣れた天井も、食事より多い栄養剤も、ここにはない。

「では手を合わせて」
「いただきます」

久しぶりに食べる姉の角煮は、この世でも一番おいしいに違いない。
公開:19/02/21 22:04

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