春に眠る2

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遠い宇宙へ旅立とうと思っていたけれど、コウタが桟橋に立ち尽くしているのが見えた。涙を汗のように流し続けながら、僕が舟を運んだ海の一点を凝視していた。
お前は大丈夫だよ。心配すんなよ。
言葉をかけたくても、もう声は届かない。
彗星になることをアイツに言うんじゃなかった。見送らせるんじゃなかった。
でも、コウタには家族もいるし、好きな女の子もいるし、部活もあるし大丈夫だろ。
もうすぐ本当の春がくる。誰かが卒業して、桜が咲く。クラス替え。部活には後輩も入ってくる。
大勢が経験してきた春のかたち。
あぁでも、今は地上のことを思うんじゃなくて、宇宙に眼を向けなくちゃ。月、火星、土星をかすめてはるかに太陽系の外へ行かなくちゃ。
地上のことは忘れなくちゃ。
特に涙のことなんて。
ファンタジー
公開:19/02/21 21:58
更新:19/02/22 06:08

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