星を見送る2

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春の夜にケンジがいってしまった。
桟橋で見送っていた僕は気がつくと真っ昼間、家にいて、目を見開いて天井を見上げながらただただ涙を流していた。
ここが自分の家だと知っている。畳に敷かれた布団、自分の部屋じゃない。仏間だ。襖越しに隣の部屋で声がする。
ケンジのことだ。ケンジのことだ。僕は分かっていた。あぁ、警察だ。学校の校長だ。担任だ。
あいつら今さらなんだ。なんで死ぬ前になんとかしてくれなかったんだ。なんで今になって仕事をしているような声をしやがって。
僕は身体を震わせながら泣いていた。
ケンジの体が見つからないことを祈っていた。だってケンジは彗星を捕まえたはずだから。
僕には星になる勇気がなかった。一緒に行けなかった。引き止めることも出来なかった。
星になって、それからケンジが何を見たいのか、もっと話をすればよかった。
ファンタジー
公開:19/02/21 21:38
更新:19/02/22 13:22

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