愛しのマチルダ

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行かなくちゃ。
青い瞳のマチルダに逢いに行かなくちゃ。

彼女は、ニューヨークのマンハッタン5-6番街の間に建つアルゴンキン・ホテルに住んでいる。
狭く古い建物だけど、雰囲気が抜群でよく似合っている。
チェックインが16時だというのに、昼過ぎには到着していた。
フロントの青年が苦笑してたから、熱烈なファンとして認識されただろう。
左を指さされ向くと、彼女の姿があった。
動悸が止まらず手は震えていたけど、僕は彼女に指を差し出して挨拶した。

「初めまして、マチルダ。ずっと逢いたかった」
マチルダはじ-っと指を見て、ペロッとなめた。
感動だ。
恐る恐るシルバ-グレ-の毛並みに触る。
許容してくれたのかな。動かないでいてくれた。
ふわっとした毛質と優雅な佇まいに癒される。

夢が叶った。たった1日。
なのに。
別れの挨拶だったなんて。
アルゴンキンキャット辞した彼女は、2017年天に召された。
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公開:19/05/17 02:28

ibara_hime

文章を削る練習をしています。
妄想は得意。感想は苦手。   ・・・・・・です。

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