火花ちるらん

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散歩の途中、何気なく公園に足を向けると、奥から騒がしい声が聞こえる。

「なんの騒ぎです?」
「火花だよ。あんた、知らねえで来たのかい」

花火でなく火花とは…。聞けば、樹木の名前だという。

混雑を分け入ると、火花に囲まれた場所に出た。黒い幹には葉がない。花が咲けば、たしかに桜に劣らず綺麗だろうが、何よりの見ものは開花する瞬間らしい。

「そろそろかな。ほら、蕾がふくらんできた」

皆が見上げる先の蕾がひとつ、風船のように膨れあがって音もなく弾けた。するとひとつ、またひとつ…。見渡すかぎりの蕾がいっせいに膨らみはじめ、次々と炸裂していく。

儚さに見惚れる。咲いたが最後、花は跡形もなく消えてしまうのだ。残るのは木漏れ日を受けた粒子の煌めきだけ。ゆっくりと、あたり一面に降り注いでくる。

「たまらない。こりゃ蜜の甘さなど目じゃないな」

見物客らは翅を開き、飛び去っていった。花粉まみれで。
ファンタジー
公開:19/05/18 23:49

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

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