早く終わればいいのに カレンダー刑事 vol.6

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「この授業、早く終わればいいのに」
教室の一番うしろの席で、タケシ君は思った。三階の窓からは、遠い山々と青い空が見える。

この学校で何十年も教える国語の先生が、長々と教科書を読みながら、教室を歩き回る。
そして、タケシ君の席の横にきた途端、先生はバッタリと倒れてしまった。

授業は中断。あわてた生徒たちに保健室に担ぎ込まれて、意識が戻った先生はこう言った。
「私の頭の中で“早く終わればいいのに”という、何百人もの声が響いて。潰される様に気が遠くなりました」

この体験を弟のタケシ君から聞いた、兄の赤口さんは、喫茶店・箱庭で、上司のカレンダー刑事に話して聞かせた。

「不思議な体験だね。でも、興味深いよ」
刑事はつぶやいた。
「もし、意志に力があるとすれば、原因はそれだ。教室のその席で、長年、積もり積もった生徒たちの“思い”が、ついに限界量に達し、先生に作用してしまったのかも知れないよ」
ホラー
公開:19/05/18 19:50
更新:19/05/19 23:31
カレンダー刑事 喫茶店

tamaonion( 千葉 )

雑貨関連の仕事をしています。こだわりの生活雑貨、インテリア小物やおもしろステーショナリー、和めるガラクタなどが好きです。

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