体内時計

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帰って来ると、充電が切れたみたいに倒れる。
いつもの事だから。彼は静かにさせておき、私は夕飯の支度。
夕飯の匂いがする頃、ぱちんと目を開ける。今日も19時ね、1時間きっかり。ご飯を食べて、お風呂に入って、テレビを見て、ベッドに入るのは零時ぴったり。

灯りを消すと、時計の音が響いてくる。
ちゃんと針が動いて、音がするのが好き。時間の流れが目と耳で感じられるから。
時計の音って、ずっと一定で安心する。隣りの彼の心音も、脈拍も、コンマ一秒狂わない。とても気持ち良い。
カチ、カチ、カチ――彼の機構が奏でる音。
時計と連動した電波受信が、彼と世界を同期する。今は試行段階で、毎日1時間の調整が必要だけど、もうすぐ新システムが完成して、24時間、絶えず正確な時を刻める様になるの。本当に待ち遠しい。

明日も、朝6時ちょうどに起きて、18時ちょうどに帰るわね。
彼の胸の文字盤に口付けて、私も目を閉じた。
SF
公開:19/05/18 01:23
更新:19/05/18 01:20
電波時計×アンドロイド

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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