最後の夏

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肌を焦がすような熱い日差しが眩しい夏。
私は人ひとりいないプールサイドから、光を浮かべた穏やかな波をぼんやりと眺めていた。時々髪から頬へと伝う水を手で拭い、学生生活最後の大会へと思いを馳せる。


200メートル自由形、一番得意なこの種目に3年間の思いを全てぶつけにいく。


自由形の才能を見出してくれたのは大好きな姉だ。
元々この部活でエースとして活躍をしていたのだが、交通事故に遭い、車椅子生活になってからはプールに近づこうとしなくなった。

入学してすぐの部活見学、そこで見た姉の泳ぐ姿はとても綺麗で、真っ直ぐ伸ばされた手足があげる水しぶきが輝いて見えたのを覚えている。
そんな姉に憧れて私は水泳の世界へと飛び込んだのだ。



「最後の大会だし、姉ちゃん、きっと来てくれるよね」


誰も返事をしない代わりに、ヒグラシの鳴き声が水へと消えていった。
青春
公開:19/05/16 21:52

べね( 千葉 )

私の作品を読んで頂きありがとうございます。

趣味でショートショートを書いています。
だいたい即席で書いているので、手直しする事が多々あります。
多忙のため更新頻度はとても低いです、ごめんなさい。
星新一さんや田丸雅智さん、堀真潮さんの作品に影響を受け、現実感のある非現実的な作品を書くのが好きです。
最後の1文字までお楽しみください。

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