新しい犯罪

「ばあちゃ～ん、遊びに来たよ～」
隣の家の玄関から元気のいい声がする。見ると小学生くらいの男の子が汗だくで叫んでいた。
「梅さんは今畑だよ」
私がそう告げてやると男の子は「え～、もう一歩も歩けないよ～」とその場にへたり込んだ。
この暑さだ。仕方なかろう。それに子供一人でここに来たのなら疲れもするだろう。
「仕方ない。呼んできてやるからウチで少し休んでな」
私は子供を家に招き、麦茶を出してやると梅さんを呼びに畑へと向かった。
「梅さん、今あんたの孫が家に来てるよ」
振り向く梅さんは怪訝な顔をする。
「はぁ？儂に孫なんぞおらんぞ」
梅さん、ボケたか？仕方ない。無理矢理にでも連れて行ってやるか。
私が家に帰って来るとそこに子供の姿はなかった。
それどころか家の中は荒らされ、金目の物が盗まれていた。
「あんた、居る巣にやられたね」
居る巣？
「ああ、住人を家から追い出して空き巣をする新しい犯罪さ」