水魚の交わり

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6ミリ罫線のノートに、大学時代のスケッチが残ってた。
懐かしいな。シャワーで濡れたまま佇む君の足に、透明な鱗模様が伝う1分間。フィルムより、鉛筆の方がクリアに切り取れる気がした。
この頃はHB使ってた。本当は、Bの柔らかく擦れる線が好きだけど。綺麗にしたところへ、汚れが移るのは嫌だって君が脹れるから。角度が変わると鈍く光る炭色、一風変わった刺青みたいで、俺は色っぽいと思ったんだけどね。

そう言えば大学で、水魚の交わりって言葉を習った。
三国志に出て来る言葉で、一般的に、欠くべからざる親密な交際を指す。元々、夫婦の仲の良さを表す言葉だったらしい。
ビルの海でヒールを履いた君は、正しく水を絶たれた魚で、俺といても窒息して弱るだけだった。俺は俺で、溺れる覚悟で君の世界に飛び込む度胸がなかった。

今、どんな手が君の足に触るんだろう。
叶うなら俺は、君を汚さず、自由に泳がせる手を持ちたかったよ。
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公開:19/05/17 00:00

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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