くやしい蝶

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野性を取り戻せ。
そう魂が反省している。
いろんなことに配慮して、人に気を使って、私は動物としての本能を失っている。
私は新橋の占い師。
占い師に必要なのは相手の話を聞く耳と無難な笑顔だ。知識などいらない。動じない心と顔で当たり前のことを言う。それが大事。
私は占い会社の契約社員で、日々の成績で収入が目減りする飼い殺し系の占い師。満員電車で通勤し、ランチ戦争に巻きこまれ、パワハラやセクハラだってある。
もっと傲慢に傍若無人に生きたい。
休日、私は蝶を捕まえに出かけた。
虫取り網を振り回しながら、野山を熊のように歩いた。
すると山中で、螺鈿のように美しい蝶を見つけた。驚くことにその蝶は、く、く、と鳴いた。
捕らえた蝶はすぐに死んでしまい、証明する手立てはない。
同僚たちは話を聞いて、無難な笑顔をくれた。
その日から彼らは私を避けている。く、くちょう。
美しかった蝶は退色して、私を占うようだ。
公開:19/05/16 15:48

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