「エリザの独白と黙考」20の職業　⑨探偵

綺麗に手入れされた庭園の緑は雨粒を弾いて輝いていた。
やがて黒雲が空を覆い始め、雨足が強まっていく。
木枠の窓に小さな稲光が走った。

エリザの思考は丘陵のようだった。
しかし雷鳴が数多の起伏を壊し、平原とした。
平原に残った点は一つの解だった。

エリザは椅子に座ったまま、壁の方を向いた。
「分かりました。犯人は……」
黒目がちなエリザは両の目をさらに見開き、一息。
「黒岩さん、あなたです」
エリザ以外誰もいない部屋に、声が響く。
「待ちなさい。違うわ……」
エリザは自らの発言をすぐに否定すると、考え込んだ。壁を見つめたまま、エリザは動かない。まばたきも忘れたように、エリザは固まったままだった。そう、エリザは気付いてしまったのだ。犯行の機会があった人物は、ただ一人しかいなかったことに。犯人の動機に。悲しい真実に。
犯人が黒岩なら良かった……そう思わずにはいられないほど、真実は残酷だった。