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「月が綺麗ですね」
 
そんなことを異性に口にしたことがある。
その頃の僕は、無知の見本だった。
帰り道、話題に困ってうつむく僕。
だから思いつくままその場凌ぎで、湖面に映える月を持ち上げた。

それを聞いた彼女の声と、これまで見たこともなかった表情を今も覚えている。
けれど、当時の僕は彼女がどう思ったのか、何故驚かせてしまったのかも考えなかった。
そんな人間だったのだ。
だから、その後大した進展もなく、彼女とは途切れた。
 

あの夜、あの時。彼女の目が映していたモノは、なんだったのか。
僕が適当に褒め称えた水鏡に映える月だったのか。
それとも……。

 
それから随分経った。湖面に映える月を僕らは共に見る。
そして僕は言った。
「月が、綺麗ですね」
「私もそう思うわ」
ステキな笑顔でこたえる彼女。
その鏡のようにキラキラした瞳には、
今度はしっかりと僕が映っているのだと、そう思えた。
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公開:19/05/12 19:18

とーしろさん

はじめまして~。
いつだって初心で、挑戦者のこころでぶっ込みたい素人モノ書きです。

沢山の方々に支えられ、刺激を与えられ、触発されて今日ももちょもちょ書いております。
一人だけでは生み出せないモノがある。
まだ見ぬステキな創造へ、ほんの少しずつでも進んでいきたい。

ショートショートというジャンルに触れる切っ掛けをくださった、
月の音色と大原さやかさんを敬愛し感謝しております。

興味をもって読んでくださる全ての方にも、ありがとうございます~^^

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