真夏の夜の蝉時雨
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夏休みに、子供を連れて田舎の実家へ泊まりに行ったときのこと。真夜中に子供が私を揺り起こした。
「トイレ…一緒に付いて来て」
と言い残し、板張りの廊下を軋ませながら走っていった。長い廊下の突き当りにトイレはある。トイレと言うより便所の方が適当かもしれない。その便所の前で子供が俯いて、ぽつんと立っていた。
「もう済んだの?」
「まだ…中に誰かいるから」
誰かって誰なのよ…私はゆっくりと便所の扉を開いた。便所の小さな窓を通じて蝉時雨が響いてきた。
「ね?誰もいないでしょ」
私は子供の頭を撫でて、
「済んだら先に布団に戻っていて。お母さんも後から行くからね」
私が寝室に戻ると、布団の横で子供が金縛りにあったように立ち竦んでいた。
「どうしたの?」
「寝られない」
「なんで?」
「ぼくの布団に、お便所にいたあの子が寝ているから」
子供の悲痛な泣き声が、真夏の夜の蝉時雨に重なった。
「トイレ…一緒に付いて来て」
と言い残し、板張りの廊下を軋ませながら走っていった。長い廊下の突き当りにトイレはある。トイレと言うより便所の方が適当かもしれない。その便所の前で子供が俯いて、ぽつんと立っていた。
「もう済んだの?」
「まだ…中に誰かいるから」
誰かって誰なのよ…私はゆっくりと便所の扉を開いた。便所の小さな窓を通じて蝉時雨が響いてきた。
「ね?誰もいないでしょ」
私は子供の頭を撫でて、
「済んだら先に布団に戻っていて。お母さんも後から行くからね」
私が寝室に戻ると、布団の横で子供が金縛りにあったように立ち竦んでいた。
「どうしたの?」
「寝られない」
「なんで?」
「ぼくの布団に、お便所にいたあの子が寝ているから」
子供の悲痛な泣き声が、真夏の夜の蝉時雨に重なった。
ホラー
公開:19/05/13 21:47
黒柴田マリと申します。ショートショート、大好きです。あと、リンゴも大好きです。
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