「エリザの独白と黙考」20の職業 ⑦時計修理人

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絶対の自信を持っているとはいえ、バラバラになった姿を見ると一抹の不安を覚えてしまう。
完全に分解して初めて、ネジが一本足りないことを確信できた。
複雑な内部構造を理解しているエリザではあるが、閉じ込められた小宇宙の中で一体どこへと部品が消えてしまうのかについては、全く分からない。
依頼人たちは一律「壊れた」と言うが、中には意図して壊した者もいるのではないだろうか。
一途の秘密を垣間見てみたくて。
一瞬だけ疑念が生まれたが、リズム良く時を刻む針の音にエリザは我に返った。
難しいことは一切考えなくて良い。
一回だけバラバラにしてから、一回だけ元に戻す。
エリザは一度も失敗したことが無かった。

一刻み一刻み。
針が正確に秒を刻むことを確認し、エリザは一安心した。

「さて、完成させなくちゃ。最後の一仕上げ」

エリザは店の中でも一番気に入っている、狂うことのない電波時計で現在の時刻を確認した。
その他
公開:19/05/10 23:18
エリザの独白と黙考 その電脳がハックしたい

undoodnu( カントー地方 )

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