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うちの嫁は、何でもかんでもよく喰う。
子ができた時に食欲に火がついたらしく、それ以来、家の食い物は残らず嫁の胃の中へ消えていく。いくら食料を補充しても無くなるので、食費が馬鹿にならない。
とうとう近くの山で採れる山菜や、虫、蜥蜴のようなものにまで手を出し始めた。
「お腹が空いて仕方ないのよう」
と、始終喰っているが、体は細くお腹もぜんぜん出てない。
一度、病院で診てもらうか⋯⋯。
やけに静かだと思っていると、飼っている犬の姿が消えていた。
「おい、ジョンのやつ逃げたぞ」
珍しく食い物を手にせず、我が子に乳をやっていた。
「あら、そう?」
惚けた顔付きの嫁の胸元を見ると、我が子に似せた人形を抱いていた。
「お、俺の息子を⋯⋯何処にやった!?」
「ここよ」
大きく開けた嫁の口を覗き込むと、そこには星々の煌めきが広がっていた。
ずぽっという音とともに、俺はその異空間に吸い込まれていった──。
子ができた時に食欲に火がついたらしく、それ以来、家の食い物は残らず嫁の胃の中へ消えていく。いくら食料を補充しても無くなるので、食費が馬鹿にならない。
とうとう近くの山で採れる山菜や、虫、蜥蜴のようなものにまで手を出し始めた。
「お腹が空いて仕方ないのよう」
と、始終喰っているが、体は細くお腹もぜんぜん出てない。
一度、病院で診てもらうか⋯⋯。
やけに静かだと思っていると、飼っている犬の姿が消えていた。
「おい、ジョンのやつ逃げたぞ」
珍しく食い物を手にせず、我が子に乳をやっていた。
「あら、そう?」
惚けた顔付きの嫁の胸元を見ると、我が子に似せた人形を抱いていた。
「お、俺の息子を⋯⋯何処にやった!?」
「ここよ」
大きく開けた嫁の口を覗き込むと、そこには星々の煌めきが広がっていた。
ずぽっという音とともに、俺はその異空間に吸い込まれていった──。
SF
公開:19/05/10 13:35
更新:19/05/10 15:30
更新:19/05/10 15:30
ショートショートカレンダー
12月11日「胃腸の日」
(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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