「エリザの独白と黙考」20の職業　⑥飲料販売業者

エリザはビルから飛び降りたことがある。
幸い植え込みに落ちたので、命まで落とすことは無かった。
ただ、全身の骨を折ってしまった。
退屈な入院生活で過ごす時間。味気の無い食事。
全てに飽き掛けていた頃、こっそり飲んだ缶ジュースの美味しさに感動した。
エリザは身近な所に、神秘を感じた。

エリザはルート営業を行い、自動販売機の商品入れ替えを行っている。
自動販売機は硬貨を入れると、機械の中で硬貨を飛ばし、種別を判定する。
このちっぽけな箱の中でも選別が行われているのだ。

エリザはビルから飛び降りたが、生きていた。
エリザには、自分は選ばれた人間だという思いが芽生えていた。

段ボールから缶を取り出し、自動販売機へと詰めていく。
日々繰り返す、同じルートでの、同じ作業。

エリザは休憩がてら、自動販売機で缶ジュースを購入する。
すると「あたり」が出て、もう一本出てきた。
これが毎日続いている。