脱出の扉

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「奴の様子はどうだ?」
「目覚めてすぐに独房の鍵を外して廊下に出ました!」
監視カメラには、よぼよぼと廊下を歩く爺さんが映し出されていた。

「どんな牢獄からも抜け出す男、人呼んでロックの辰⋯⋯流石だな」
「は、早い⋯⋯もう三つ目の扉を突破!」
「フフフ、しかし今回ばかりは逃げようがない」
奴のために離れ小島に作ったこの施設には、そもそも人間が出入りする扉はない。
「四つ目の扉を突破!」
奴を閉じ込めたあと、たったひとつの扉もコンクリートで塗り固めたからな。
「五つ目の扉を突破!」
そして、ワザと厳重な鍵を付けた扉を何重にも設け、すべての鍵を開けても外に出る扉など無いことに気づくワケさ。
「六つ目の扉を突破!」
何っ!?

「六つ目の扉など無い筈だぞッ!」
監視カメラに映る映像には、コンクリートで塗り固めたはずの壁に扉ができていた。
扉の向こうには、太陽に照らされた草原が広がっていた──。
ミステリー・推理
公開:19/05/11 17:50
更新:19/05/12 10:28
ショートショートカレンダー 6月9日「鍵の日」

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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