「エリザの独白と黙考」20の職業　⑧薬剤師

ヘルスケアサポートの発展により予防医療が進み、新薬開発は別の道を模索し始めていた。
エリザを主任とする研究室では、新薬による治療効果以外の研究開発を行っていた。
味だ。

最初はラムネのようなふんわりととろけるような甘い薬を開発した。
だが、子どもが勝手に薬を服用してしまう事故が多発したため、禁止された。

次は音の出るラムネのような笛のような楽しい薬を開発した。
これも、子どもが勝手に薬を服用してしまう事故が多発したため、禁止された。

時代がどれだけ進んだとしても、先人の教えは偉大だ。
「良薬は口に苦し」ということわざがある。
エリザたちは教えに従うことにした。

不味い薬を開発しては実験を繰り返した。
ある薬を被験者が服用することができる、ということは、その薬はまだ完全な不味さとなっていないことを意味する。
研究はまだ続く。

薬をひと舐めしたエリザはせき込み、クスリともしなかった。