弁当箱の仕切り役

4
10

「ごちそうさま」
弁当箱を閉じようとした時、「待て」と箱の中から声がした。
驚いて中を見ると、緑のギザギザが喋っていた。
「僕はバラン。弁当箱の仕切り役さ」
そいつはキザな奴だった。
「君はどうして梅干しを残すのさ?梅干には防腐効果や殺菌効果があるし、彩りだって豊かになる。お弁当にはなくてはならない存在なんだよ」
「でも…」
「確かに梅干しは嫌われ者かもしれない。しょっぱいからね。でも、その塩分は熱中症対策にも効果が期待出来るんだ」
私はバランの熱弁にウンザリした。
「待て。黙って蓋を閉じるな」
もう勘弁してよ。
「君がそんな態度を取るなら、僕はもうおかずを仕切らないよ。お弁当全部が煮物の味になってもいいのかい?」
汁まみれなお弁当なんて最悪よ。
こうなったら仕方ないわ。
私はバランをバランバランに引き千切った。

翌日、弁当箱を開けると、中は分裂して増殖したバランでいっぱいになっていた。
ファンタジー
公開:19/05/08 19:32
更新:19/05/08 19:51

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容