梅に目白か鶯か

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梅に鶯と言うが、うちの近所で鶯が鳴くのは、梅の花は散り、小さな実が付き始める頃だ。
「花札の鳥は、鶯じゃなくて目白だ」
知った時は驚いた。鶯は緑より茶に近い地味な鳥で、藪に住む。あの鮮やかな緑、鳥類図鑑で比べれば、確かに目白だ。

声はすれども姿は見えず。しかし盛んに鳴いている。ホーホケキョ!ケキョ!キョキョキョ、ケッキョ!ホーホホホ、ケッキョ!風流どころか、語尾の全部に『!』を付けたい声量。鳴き方も案外ばらばらだ。
「それは、雌にアピールする練習だから」
繁殖期、雌を獲得し、子孫を残せた雄は鳴かなくなるらしい。夏まで鳴く奴は、モテずにあぶれた独り者。ホケキョ!キョキョ、ホホホホケッキョ!結構必死だ。

ふっと静かになると、相手が見付かったかと思う。
うちの宿六は両方だ。花のある内は、口説き文句の目白押し。実を結んだら突つきもしない。寄って来るのは、私に選挙のウグイス嬢を頼みたい時だけだ。
その他
公開:19/05/08 18:41

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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