辞書ロック・ホームズⅢ

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「先生、知恵を貸して下さい」
「先生は止して」
モナリザが齢を重ねた様な微笑で、先生は広げた新聞を畳んだ。金縁の眼鏡の奥、淡い虹彩は、僕の相談の粗方を看破した風だ。
「大学の教授が、妙な問題を……」

『設問:本棚の辞書に文書を隠せ』
なお、条件は以下の通りとする。
①文書は辞書と独立に記し、物理的に隠れた状態である事。
②辞書を移動してはならず、本棚との接触を解いてもならない。
③文書は直接辞書に隠し、かつ容易に取り出せる状態である事。
④辞書の内部に触れてはならない。
⑤辞書および、本棚に変化を加えてはならない。

「ページに挟めず、加工出来ず、動かしても駄目。お手上げです」
「その辞書、文脈から察するに、外箱は無いのね」
「……どういう事ですか?」
「棚にぴったり収めた辞書、貴方なら、どうやって取るかしら?」
はたと膝を打った。
「背表紙の隙間!」
さすが先生。やはり辞書の専門家だ。
ミステリー・推理
公開:19/05/09 22:07
多くの辞書には、 背表紙と本体の間に 隙間がございます。

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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