北国の監獄

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「看守さん、ちょっと来てくれ!」
 囚人は、鉄格子を握りしめて看守に訴えた。
「ここの独房は寒くてたまらない。そこで相談なのだが、暖房器具を支給してくれないか」
「何を贅沢な事を言っているんだ?」
「いくら俺が死刑囚だからと言って、凍死させていいのか!」
 看守は少しむっとした表情を浮かべて
「所長に報告する。ちょっと待っていろ」
 と、言い残して立ち去った。しばらくして、看守が足音を響かせて戻って来た。
「喜ぶといい。所長が暖房器具の支給を認めて下さったぞ。お前にぴったりの暖房器具だ」
「どんな暖房器具だ。ここはガスは通ってないから電気か」
「その通りだ」
「…とすると電気ストーブか」
「いや違う」
「電気毛布か」
「それも違うな」
「…意外なところで電気こたつとか?」
 看守は首を横に振った。
「もったいぶらないで教えてくれ」
 看守はニヤリと笑って囚人に答えた。
「電気椅子だ」
その他
公開:19/05/09 22:03

黒柴田マリ( ヨコハマ )

黒柴田マリと申します。ショートショート、大好きです。あと、リンゴも大好きです。

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