伝説の勇士

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 その男は何の前触れもなく戦場にやってきた。兵隊たちは集まり囁きあった。
「あの男は伝説の勇士に違いない」
 王は、その男を見て
「間違いない。此度の戦で切り札となる男じゃ」
 王の言葉とおり、その男は土壇場で勝利に導く活躍を見せた。皆が勝利に酔いしれていた頃、伝説の男は行き先も告げず立ち去った…噂では、別の地で厳しい献上金に喘ぐ最下層の集団を指揮し革命を成し遂げたと言う。
 時は移り、この地で再び戦が始まった。またも伝説の男は戦場に帰ってきた。しかし、今度は以前の戦の様子とは異なっていた。その男が戦列に加わると
「この役立たずが!」
「どこかへ行ってしまえ」
「はっきり言って、あんたは疫病神だ」
 兵隊達から口汚く罵られた。

 あるときは、勝負の切り札と呼ばれた男。またあるときは、革命の指導者と崇められた男。そんな伝説の男「ジョーカー」でも「ババ抜き」では、ただの厄介者にすぎなかった。
ファンタジー
公開:19/05/09 21:36

黒柴田マリ( ヨコハマ )

黒柴田マリと申します。ショートショート、大好きです。あと、リンゴも大好きです。

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