雨繭

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 僕の祖父母の家は今では珍しい養蚕農家だ。
 普通の蚕ではない。雨の糸を吐く蚕を飼っている。
 梅雨に向かうこの時期、雨糸を取る養蚕農家は大忙しで、GW中は僕も手伝いに行く。
 祖父母の家の蚕の繭は、学校で見た繭とは違う。白というより銀色で、幾重にも重なる糸が形作る輪郭はどことなく霞んでぼんやりとしていて、触るとひんやりとしている。
 これを解いて糸にする。
 僕が集めてきた繭を、祖父が茹で、祖母と母が糸を取る。
「今年は良い雨が取れたね」
 祖母は満足そうに言う。
「ちょっと試してみようか」
 空に向かって、取れたばかりの糸を撒く。
 それはすぐに雨になって、辺り一面に降り注ぐ。
 晴天の中、突然降り出した雨に道行く人は右往左往。悪戯好きな祖母は小さく舌を出して笑った。
「やっぱり良い出来だ」
 僕も窓から空を見上げた。五月晴れの陽を受けた狐雨の向こうに、小さな虹が掛かっていた。
ファンタジー
公開:19/05/07 12:10
更新:19/06/12 17:29

堀真潮

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tamanegitarou1539@gmail.com

 

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