「エリザの独白と黙考」20の職業 ④ファイター

4
5

クレヨン、クレパス、クーピー、色鉛筆、マーカー、ペンキ。
なんでもよかった。
エリザは赤が欲しかった。
描きたい絵があるわけではない。
まだ、字を書くことはできない。
でも、欲しかった。

「ママ買って」
気軽にねだれる友だちが羨ましかった。
ママと呼べる人がいて羨ましかった。
三番目のママを、エリザはママと呼んだことはなかった。

横断歩道を夕陽が赤く染めていた。
もう帰らなければならない。
手を繋いで仲良く家路につく母娘を見て見ぬ振りをした。
ガードレールを挟んだエリザの横を、赤色灯とけたたましい音を撒き散らして救急車が過ぎ去っていった。
呼応する犬の遠吠えが、細く長く耳に響いた。

「ただいま」
玄関のドアを開けると、三番目のママがエリザに向かって飛んできた。
顎にガクンと強い衝撃を受けたエリザは、思わず呟いていた。
「ママ、なんで」
前歯がポロリと落ちて床を転がり、薄く紅を引いた。
その他
公開:19/05/07 22:06
エリザの独白と黙考 その電脳がハックしたい

undoodnu( カントー地方 )

構成の凝った作品が好きです。
雑絡みOK!

電子書籍発売中:
https://www.amazon.co.jp/undoodnu/e/B07MK93FWK

Twitter:
https://twitter.com/undoodnu

note:
https://note.com/undoodnu

タップノベル:
https://tapnovel.com/writers/15521

アルファポリス(漫画など):
https://t.co/dsJrZRgEKC

ベリーショートショートマガジン「ベリショーズ」参加&編集&IT技術顧問:
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07PDJ6QPL

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容